
国譲りの社から、神在餅のぜんざいへ。出雲大社と門前町をたどる旅
島根県の出雲大社は、『古事記』と『日本書紀』の国譲りの神話に始まる社です。旧暦10月、全国の神々がこの地に集まって神議りをするといわれ、出雲ではその月を神在月と呼びます。神話をたどって参拝し、神在祭の振る舞いに由来すると案内される釜揚げそばとぜんざいを、門前の神門通りで選ぶ旅です。
基本
所在地 出雲大社・門前町は島根県にあります。

旅の輪郭
舞台は出雲大社の境内と、その門前町の神門通りです。JR出雲市駅から一畑バスの出雲大社行きで向かう前提で書いています。境内の御本殿の裏側は、ほかの区域より早く閉まります。午前に参拝と宝物殿、昼から門前、と考えると、閉まる区域を気にせずに回れます。島根半島の西の端、稲佐の浜と日御碕は「もう一日足すなら」として後半に分けています。
国譲りの神話と、高く築かれた御本殿
国を譲った神の住まい──出雲大社
出雲大社に祀られているのは大国主大神です。『古事記』(712)と『日本書紀』(720)には、大国主大神が国づくりをした国土を天照大御神に譲った「国譲り」の際、その功績を称えて壮大な御本殿が創建されたと記されています。住まいは「天日隅宮」と呼ばれ、柱は高く太い木で、板は厚く広く築くと告げられたと伝わります。国を譲った大国主大神は、目に見えない世界を司ることになりました。
大国主大神には「所造天下大神」という名もあり、これは国土を開いた国づくりに由来します。出雲大社の公式の昔話では、だいこくさまが因幡の気多の岬で皮を剥かれて泣くうさぎを見つけ、真水で洗って蒲の花の上に寝かせて助けたと伝えています。出雲大社でいう「縁」は男女の縁だけではなく、生きとし生けるものが共に栄えるための結びつきのことです。
いまの御本殿と境内の摂社・末社は、延享元年(1744)の御遷宮のときに造営されたもの。参拝の作法は「2礼4拍手1礼」で、御本殿以外の社殿でも同じです。八足門で御本殿にお参りしたあと、瑞垣を左回りに進んで各社殿をお参りします。
| 見どころ | 正式な参拝作法は「2礼4拍手1礼」。ご本殿以外の社殿でも同様。八足門で御本殿をお参りしたあと、瑞垣を左回りに進んで各社殿をお参りする。 2026-09-14確認[1] |
|---|---|
| 営業時間 | 参拝時間は午前6時~午後7時。御本殿より裏側の区域は警備の都合上、午後4時30分に閉鎖。午後7時以降は御垣内を閉鎖し、銅鳥居前からのお参りとなる。 2026-09-14確認[2] |
地中から現れた柱──宝物殿と古代出雲歴史博物館
「柱は高く太い木で」という神話の言葉は、平成12年(2000)の春に形を持って現れました。境内の八足門の前から、御柱が姿を現したのです。調査のあと柱は取り上げられ、御本殿中央の心御柱は出雲大社の宝物殿「神祜殿」に、宇豆柱は島根県立古代出雲歴史博物館に展示されています。
境内の国旗掲揚塔の高さは47メートル。平安時代の御本殿が48メートルあったという伝えより、少し低く作られています。掲揚塔を見上げてから柱を見に行くと考えると、伝えの高さと、地中から出てきた柱とが一本につながります。
| 料金 | 宝物殿の拝観料は大人300円、大学・高校生200円、中・小学生100円、幼児無料。開館時間は8:30~16:30(入館は16:00まで)。 2026-09-14確認[3] |
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博物館では、10月9日から11月29日まで、リニューアル記念の特別展「その後のヲロチとスサノヲ」が開かれています。
| 休業日 | 休館日は毎月第1・第3火曜日(休館日は変更になる場合あり)。 2026-10-08確認[4] |
|---|---|
| 営業時間 | 開館時間は9時~18時(11月~2月は9時~17時)。最終入館時刻は閉館時間の30分前。 2026-10-08確認[4] |
| 見どころ | 出雲大社境内から2000年に発見された「宇豆柱(うづばしら)」を展示する。 2026-10-08確認[5] |
左から綯い始める──神楽殿の大注連縄
神楽殿の注連縄は長さ13.5メートル、重さ4.7トン。出雲大社では一般的な神社とは反対に、向かって左を上位、右を下位とする習わしがあり、注連縄も上位の左から綯い始めて右で綯い終える張り方になっています。注連縄の前に立ったら、太い方がどちら側にあるかを確かめると考えると、この社だけの習わしが目で分かります。
| 見どころ | 神楽殿の注連縄は長さ13.5m・重さ4.7t。 2026-10-01確認[1] |
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神々が集まる月──神在月
旧暦10月は、全国の八百万の神々が出雲に集まる月です。ほかの土地では神無月といいますが、出雲では神在月と呼びます。神々は旧暦10月11日から17日までの7日間、人には前もって知ることのできない人生のさまざまな事を神議りにかけて決めるといわれ、男女の結びもこのときの神議りだといいます。
2026年は、11月18日に稲佐の浜で神々を迎える神迎神事があり、そのあと出雲大社の拝殿で神迎祭が執り行われます。神在祭は11月19日・23日・25日。一般の参列はできませんが、境内での参拝はできます。この神在祭の振る舞いが、次の章の門前の味につながります。
門前を歩く
大鳥居から正門へ──神門通り
神門通りは、宇迦橋の大鳥居から出雲大社の正門まで続く表参道です。勢溜から宇迦橋までの門前町には、出雲そばやぜんざいの店、縁結びの品を扱う土産物屋が並びます。参拝のあとに大鳥居の側へ歩いていくと考えると、次の章の味がこの通りに揃っています。
| 概要 | 宇迦橋の大鳥居から出雲大社の正門まで続く約700mの表参道。お土産屋や出雲そば・ぜんざいなどの店が並ぶ。勢溜から宇迦橋まで700m続く門前町とも案内される。 2026-09-14確認[6] |
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参拝客を迎えた駅舎──旧大社駅
旧大社駅は、明治45年(1912)に国鉄の出雲今市─大社線の開通とともに開業しました。神門通りの整備で利用者が増え、大正13年(1924)2月に2代目の現駅舎が建てられています。門前町・大社町の表玄関にあたる和風建築で、全国に3件しかない重要文化財の駅舎のひとつ。和風建築の重文駅舎はここだけです。
外観は純日本風ですが、屋内中央の3等待合室は、屋根裏に西洋式の「トラス構造」を使って、天井が高く柱のない空間にしています。和風の外観の中に西洋の造りが入っている、と考えると、参拝客を迎えた大正の駅の姿が見えてきます。
神在祭から生まれた味:釜揚げそばと、ぜんざい
出雲そばの食べ方のひとつ、釜揚げそばは、出雲大社などの神社の周辺が発祥とされます。旧暦10月の神在祭で、温かい釜揚げの新そばが振る舞われていたことに由来します。神々が集まる月の振る舞いが、そのまま門前の食べ方として残ったことになります。
ぜんざいも同じ神在祭から来た名前です。出雲では神在祭のときに「神在餅(じんざいもち)」を振る舞っていて、それが訛って「ぜんざい」になったと案内されています。神門通りでは、出雲そばと出雲ぜんざいの店が同じ通りに並びます。昼に釜揚げそば、午後にぜんざい、と分けると考えると、神在祭の二つの振る舞いを一日でたどれます。
汁ものなら、しじみ汁。宍道湖のヤマトシジミは「宍道湖七珍」の一つに数えられ、出雲地方ではこのシジミのしじみ汁が日常の食卓に根づいています。
土産には、参拝のために生まれた菓子があります。明治31年(1898)創業の俵屋菓舗は、大社町大鳥居で「俵まんぢう」と「俵せんべい」の製造を始めました。初代の影山助市が、出雲大社への参拝の記念、土産になるものを作りたいという思いから、八雲堂の屋号で作り始めた菓子です。出雲大社のふもとの宿禰餅本舗 坂根屋(明治5年創業)の「宿禰餅」は、出雲の国が出生の地とされる相撲の始祖・野見宿禰の文武両道の生き方を敬い、その名を冠した銘菓。坂根屋はぜんざいも作っています。
大社町で3代続く御菓子とみや(1947年創業)は、200余年続いた大社町の和菓子店「高田屋」が2021年11月に幕をおろしたのを受けて、2022年2月に銘菓「雲太(うんた)」を受け継ぎました。昭和28年から出雲大社にお茶を献納している原寿園(明治44年創業)では、お茶請けやお茶を使った菓子も手がけています。
過ごし方:参拝の午前、門前の午後
午前は、JR出雲市駅から一畑バスで出雲大社へ。拝殿から八足門へ進み、2礼4拍手1礼で御本殿にお参りしたら、瑞垣を左回りに各社殿をめぐります。御本殿の裏側の区域は早く閉まるので、境内は午前のうちに回ると考えてください。神楽殿の大注連縄と国旗掲揚塔を見て、宝物殿で心御柱を。
昼は神門通りへ出て釜揚げそば。午後は古代出雲歴史博物館で宇豆柱を見て、特別展の会期中なら「その後のヲロチとスサノヲ」も。帰りに神門通りでぜんざいと土産を選び、旧大社駅の駅舎を見て一日を終えます。
神在月に合わせて訪ねるなら、2026年は11月18日の神迎神事・神迎祭、11月19日・23日・25日の神在祭(23日・25日は縁結大祭も)があります。日程はこの秋の催しで確かめてください。
もう一日足すなら:夕日の聖地、稲佐の浜と日御碕
古来、大和の北西にある出雲は、日が沈む聖地と考えられてきました。出雲の人々は夕日を神聖視し、畏れ敬っていたと考えられています。島根半島の西の端の海岸線は、出雲神話の舞台となった「稲佐の浜」と「日御碕」の名で知られ、夕日にちなむ二つの社、出雲大社の「天日隅宮」と日御碕神社の「日沉宮」が祀られています。神在月に神々を迎える神迎神事が行われるのも、この稲佐の浜です。
出雲大社から稲佐の浜へ向かう途中には、出雲阿国の墓があります。山根の太鼓原の石段を登った先、中村家の墓所にあり、阿国の墓だけが特別に石棚で囲った平たい自然石で作られています。平成14年に改修され、いまも芸能の関係者や歌舞伎の愛好者が参っています。
日御碕神社は、上の宮「神の宮」と下の宮「日沉宮」の二つの社からなります。下の宮には、神代の昔、清江の浜にいた天葺根命のもとへ天照大御神が降臨し「吾はこれ日の神なり。此処に鎮まりて天下の人民を恵まん、汝速に吾を祀れ。」と告げたので経島に祀ったと伝わり、天暦2年(948)の頃に経島からいまの地へ遷ったといいます。上の宮には、出雲の国造りを終えた素盞嗚尊が鎮まる地を求めて柏葉で占い、隠ヶ丘に止まったので、御子の天葺根命が社殿を築いて祀ったと伝わります。いまの境内の建物は、3代将軍徳川家光が寛永12年(1635)に松江藩主・京極忠高に命じて造営を始め、藩主が松平直政に替わった寛永20年(1643)に竣工、翌21年に遷宮が行われたものです。
参拝の作法は「二拝二拍手一拝」で、出雲大社の2礼4拍手1礼とは違います。お賽銭は二拝二拍手一拝の前に。二つの社で拍手の数が違うことを確かめると考えると、一日目と二日目の参拝が対になります。
| 見どころ | 参拝の作法は「二拝二拍手一拝」で、2回おじぎをした後、2回拍手をし、最後にもう1回おじぎをする。お賽銭は「二拝二拍手一拝」の前に行う。 2026-10-08確認[8] |
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風土記の神話をたどるなら、長浜神社もあります。出雲臣広嶋が編んだ『出雲国風土記』は、地名の由来や言い伝えを記したもので、五つの風土記のうちほぼ完全な形で写し伝えられたのはこれだけです。風土記の国引き神話では、国を引いた綱をかけた杭が佐比売山(いまの三瓶山)、綱が薗の長浜になったと伝わり、長浜神社は国引きの主人公・八束水臣津野命を主祭神として祀っています。行き方は出かける前に確かめてください。
出雲大社・門前町で体験・ツアーを探す
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この旅の続きを、どこに泊まる?
神在月の神事や朝の参拝を中心にするなら、出雲大社の門前、大社町に泊まると、境内と神門通りが宿の続きになります。
この秋の催し
日程は出典先で最新をご確認ください。
| 10月9日〜11月29日 開催中(2026年) | リニューアル記念 特別展「その後のヲロチとスサノヲ」 島根県立古代出雲歴史博物館のリニューアル記念特別展「その後のヲロチとスサノヲ」。会期は令和8年10月9日(金)~11月29日(日)。 [9] |
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| 11月18日 2026年の開催予定 | 神迎神事・神迎祭 毎年 旧暦10月10日。2026年11月18日(水)19時~。出雲大社の西方1kmにある稲佐の浜で、神々をお迎えする神迎神事(かみむかえしんじ)が斎行されます。この後、出雲大社拝殿において「神迎祭」が執り行われます。 [10] |
| 11月19日〜11月25日 2026年の開催予定 | 神在祭(出雲大社) 2026年は11月19日・23日・25日に斎行。全国の神々が旧暦10月11日から17日まで7日間出雲で神議りをするとされる期間の祭。一般の参列はできないが境内での参拝は可能。同期間に縁結大祭(11月23日・25日)もある。 [10] |
旅支度と出典(営業時間・料金・アクセス・注意)
知っておきたいこと
営業時間・料金・アクセス
金額・時間は確認日時点のものです。出かける前に出典先でご確認ください。
神門通り
| 概要 | 宇迦橋の大鳥居から出雲大社の正門まで続く約700mの表参道。お土産屋や出雲そば・ぜんざいなどの店が並ぶ。勢溜から宇迦橋まで700m続く門前町とも案内される。 2026-09-14確認[6] |
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出雲大社 宝物殿「神祜殿」
| 料金 | 宝物殿の拝観料は大人300円、大学・高校生200円、中・小学生100円、幼児無料。開館時間は8:30~16:30(入館は16:00まで)。 2026-09-14確認[3] |
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出雲大社
| 見どころ | 正式な参拝作法は「2礼4拍手1礼」。ご本殿以外の社殿でも同様。八足門で御本殿をお参りしたあと、瑞垣を左回りに進んで各社殿をお参りする。 2026-09-14確認[1] |
|---|---|
| 営業時間 | 参拝時間は午前6時~午後7時。御本殿より裏側の区域は警備の都合上、午後4時30分に閉鎖。午後7時以降は御垣内を閉鎖し、銅鳥居前からのお参りとなる。 2026-09-14確認[2] |
荒神谷遺跡
| 見どころ | 1985年に約7m離れた地点から銅鐸6個、銅矛16本が出土し、全て1998年に「島根県荒神谷遺跡出土品」として国宝に指定された。 2026-09-29確認[13] |
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出雲大社 神楽殿
| 見どころ | 神楽殿の注連縄は長さ13.5m・重さ4.7t。 2026-10-01確認[1] |
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出雲大社 国旗掲揚塔
| 見どころ | 掲揚塔の高さは47メートル。平安時代の御本殿の高さ48メートルの伝えよりも少し低く作られている。国旗の大きさは13,6 m×9 m、畳75畳分の大きさ。 2026-10-01確認[1] |
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旧大社駅
| 見どころ | 外観は純日本風だが、屋内中央の3等待合室は屋根裏に西洋式の「トラス構造」を用いて天井が高く柱のない空間を実現している。 2026-10-04確認[7] |
|---|---|
| 概要 | 出雲大社の門前町・大社町の表玄関にある和風建築で、全国に3件しかない重要文化財駅舎のひとつ。和風建築の重文駅舎はこの旧大社駅舎だけ。 2026-10-04確認[7] |
稲佐の浜
| 見どころ | 出雲大社の西方1kmにある稲佐の浜で、神々をお迎えする神迎神事が斎行される。 2026-10-05確認[10] |
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日御碕神社
| 見どころ | 参拝の作法は「二拝二拍手一拝」で、2回おじぎをした後、2回拍手をし、最後にもう1回おじぎをする。お賽銭は「二拝二拍手一拝」の前に行う。 2026-10-08確認[8] |
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島根県立古代出雲歴史博物館
| 休業日 | 休館日は毎月第1・第3火曜日(休館日は変更になる場合あり)。 2026-10-08確認[4] |
|---|---|
| 営業時間 | 開館時間は9時~18時(11月~2月は9時~17時)。最終入館時刻は閉館時間の30分前。 2026-10-08確認[4] |
| 見どころ | 出雲大社境内から2000年に発見された「宇豆柱(うづばしら)」を展示する。 2026-10-08確認[5] |
国を譲った神の高い住まい、地中から現れた柱、神々の集まる月の振る舞い。出雲では、神在祭のそばと餅が、いまも門前の昼と午後の味になっています。
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情報について
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